ゲーム会社の出向の実情を洗いざらい書いてみる

ゲーム会社

出向、という言葉は特定の業界以外にはあまり使われないようです。そして業界や企業によって出向の意味も内容も大きく変わってきます。

 

私の友人で飲食業界でスーパーバイザーをしている人が居ます。会社が経営している3店舗の飲食店の管理しているそうなのですが、その彼に出向の話をしたところ、

 

 

出向?ウチの会社は子会社とかないから関係ないかな

 

 

と言っていました。

 

出向というと、子会社や協力会社への出向という天下り的な印象があるようです。ただゲーム会社の出向はそれとは異なります。ゲーム会社での出向の大半は、クライアント企業に常駐して作業することです。いわゆる客先常駐ですね。

 

ゲーム 出向

今回はあまり知られていない?ゲーム業界の出向について記事にしてみます。

 

ゲーム会社の開発をざっと説明

まずはゲーム開発についてざっと説明します。

 

ゲーム開発は、

  1. 企画を考えて、
  2. 仕様書を作り、
  3. グラフィックやサウンドを作成し、
  4. プログラムで組み込み、
  5. デバッグをして、
  6. 完成!

という工程で進みます(非常に大雑把に解説しています(^^;)

 

そして上記のような工程で進むのは、いわゆるパブリッシャーといわれるゲームメーカーだけです。

 

ほとんどのゲーム会社、いや、ゲーム開発会社はその工程のどこかに参加して業務を行っています。

 

一次請けと呼ばれる大手開発会社は、ゲーム制作を一本丸々受託しますが、そうではない二次請け、三次請けの会社はグラフィックだけとか、プログラムだけなどの得意分野に絞って開発業務を行っています。

 

現実はもっと細分化されていて、例えばグラフィックだと背景イラストだけとか、敵キャラクター3Dのモデリングだけ、という部分請けもよくあります。

 

基本的に発注する会社で手が足りないところを外部に委託するので、実際にはさらに細かくなります。例えば、キャラクターのモーションの工数が6人月分ほど社内で足りていないので、6人月分だけ外部に委託するか、というような感じです。

 

人月・・・一人の人間が一ヶ月(20日)作業することを想定した作業量のことを言います。例えば、一人が作業して60日かかる場合は、3人月になります。

 

ゲーム業界における出向とは

ゲーム業界の出向
ゲーム業界の出向は、クライアント企業に常駐してプロジェクトの一員として仕事をすることです。基本的にクライアント企業に直行して業務を行い、業務が終わればそのまま直帰します。本来所属している会社に立ち寄ることはありません。

 

契約は業務委託契約であることが大半なので、勤務時間はもちろん出社日についても自由です。要は仕事の完成に対して責務があり、作業場所がクライアント企業という形です。

 

ただ実際には出向先の勤務時間に合わせることがほとんどです。出向先企業から勤務時間を指定されたりすると法律的にアウトなので、勤務時間に合わせつつも出勤時間は自由ということになっています。

 

忘年会や新年会のイベントや会社独自の行事があることは、元々所属している企業に参加します。会社によっては週に一度報告のために自社に立ち寄ったり、出向先の企業に上司が訪問してミーティングしたりするケースもあります。

 

出向の場合は指揮命令権は出向元企業にあるので、この辺りは非常に気を使う部分でもあります。そうでないと法律違反になる可能性があるためです。

 

いわゆる偽装請負ですね。偽装請負について書き出すと、それこそ一つの記事では書きれないので、ここでは割愛することにします。

 

出向が必要な理由その1 利便性

出向のり弁性
では、なぜゲーム業界で出向が多いのか。

その理由は複数あります。

 

まずは出向の利便性です。開発をしていてすぐ隣で作業していれば、作業状況や進捗が一目瞭然です。

 

例えば3Dキャラクターのモデリングをしていて、形状に問題ないか確認が必要なケースがあったとします。

 

受託開発の場合だと、クライアントの担当者に3Dデータ、もしくは画像データを送って、テキストを添えてメールやチャット、もしくはプロジェクト管理ツールなどで問い合わせをします。

 

クライアント側でもそれに対するフィードバックをメールやチャット、ときには電話で伝える必要があります。詳細に指示するために画像や資料を作成するケースもあるでしょう。

 

ところが出向で作業していれば、実際の作業担当者は同じ社内にいるので、目視で確認して口頭で修正指示をすることができます。

 

もちろん出向の場合でも記録を残すためにチャットに書いたり、プロジェクト管理ツールも併用しますが、すぐ近くにいて口頭でコミュニケーションが取れるのは非常に大きいです。

 

出向が必要な理由その2 開発ツールとセキュリティ

ゲーム 開発

ゲーム開発には様々なツールを使用します。たとえばDCCツールと呼ばれる3D統合ソフトであるMayaを使用するとします。

  • Mayaのバージョン
  • プラグイン
  • スクリプト

の環境を合わせる必要があります。さらにはプラグインにもバージョンがあるので、それらを合わせておかないと、プロジェクト途中で問題が発生したりします。

 

過去に協力会社に依頼したデータを確認しようとしたら、どうしても開くことができず、使用しているプラグインを確認しても同じで、困ったことがありました。よくよく確認するとプラグインのバージョンが異なっていて、それが原因だったことがありました。出向で同じ開発環境で作業していれば、発生しない事案でした。

 

インハウスツールと呼ばれる開発会社が独自開発したツールを使用している場合は、そのツールを貸し出してもらえるかどうかという問題もあります。

 

セキュリティ面でも出向に利点があります。出向の場合はデータを社外に出すことがないので、開発前のデータの流出など、あってはならないケースを防ぐことができます。

 

実際の作業データはもちろん、レギュレーションなどの開発に関係する資料などもすべて社内に置いておくことができます。

 

出向が必要な理由その3 ゲームエンジン

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ゲームエンジンの問題もあります。ゲームエンジンとはゲームを効率的に開発するためのミドルウェアです。

 

UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンが開発に使用されることが多くなっていますが、まだまだ自社製エンジンも広く用いられています。

 

自社製エンジンでゲーム開発を行う場合、それを貸し出してくれるかどうかはそのエンジンを所有している企業によります。

 

自社製エンジンが借りられない場合は、そのエンジンを所有しているメーカーもしくは一次請けの開発会社に出向せざるを得なくなります。

 

自社製エンジンを貸し出してくれる場合でも、一次請けはOKだけど二次請けはダメ、というケースもあったりします。その場合は二次請け以降の会社は、一次請けの企業に出向して作業することになります。

 

出向が必要な理由その4 開発機

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コンソール(コンシューマー)ゲームの開発の場合は、開発機が必要になるケースもあります。開発機とは実機とも呼ばれる、開発専用のゲームハードです。一般的には通常のゲーム機と同じに見えるのですが、開発用の機能を組み込んであります。

 

開発機があると、PCで製作したデータを、開発機に送って目視で確認することができます。ゲーム業界で画面出しとか実機確認と呼ばれる作業ですね。

 

PC上でゲーム用のグラフィックを作成しても、開発機で見ると色目が異なっていたりすることはよくあるので、コンシューマーゲームの開発において、開発機は欠かすことができません。

 

この開発機はメーカーから購入もしくはレンタルしてもらって開発をするのですが、メーカーとデベロッパー契約(開発者契約)を結んでいないと購入できなかったりします。

 

そうなると必然的に出向という選択になってしまいます。

 

出向のメリット 自身の成長になる

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出向にもメリットはあります。一番のメリットは出向する人の成長になることです。

 

一口にゲーム開発といっても会社によってやり方が異なります。クライアントに出向して作業することで、自社とは違う開発のノウハウを得ることができます。

 

私自身も出向して作業していたことがあるのですが、確実に自分の成長になると実感しました。何よりも他の人が作ったデータを見ることができるのが大きいのです。

 

3Dのモデルひとつとっても、ポリゴンの割り方、テクスチャの描き方、UV展開の仕方など見るべきところが山のようにあります。専用のスクリプトが用意されていたり、モデル製作のためのレギュレーションなど、環境も勉強になることがたくさんあります。

 

実制作以外のプロジェクト管理でも参考になります。

  • 資料
  • ファイル管理
  • タスク管理
  • 進捗管理

上記のような他社のやり方を体験することで、良いところは取り入れられますし、悪いところは反面教師になるので、出向に行くことで自分自身が大きく成長することは間違いありません。

 

出向のデメリット 帰属意識の欠如

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出向のデメリットは帰属意識が薄くなることです。

 

クライアント企業に出社し、

そこで仕事をして、

そのまま直帰する。

 

ずっとそういう生活をしていると、自分が所属している会社がどこなのか分からなくなるときがあります。

 

私自身も若い頃に出向に行ったこともあるのですが、少なからず出向の影響はあると感じました。出向が自分自身の成長につながることを理解していたとしても「なぜ自分が出向に選ばれたのだろう?」という考えは、ずっと頭に中にわだかまったまま、消えることはありませんでした。

 

そういう意味では、スタッフが出向に行っているゲーム会社は、その人のケアをする必要があります。

 

出向を「武者修行」と捉えて、全く気にしない人も居るのですが。

 

まとめ ー 出向を否定はしないが、受託での開発を

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ゲーム業界における出向をを否定はしません。

 

IT業界ではSESという言葉もあったりします。ゲーム開発における出向も、それに近いものがあるでしょう。ゲーム業界ではSESという言い方はしませんが。

 

中小の開発会社であれば、数名のスタッフが出向に行っていることが多いですし、実際にスタッフの大半が出向に行っている会社も存在したりします。

 

それでも受託開発が一般的になれば良いと思います。出向して作業していることに悩み、業界を離れていった人も見ているので。

 

出向のメリットもあります。中には他の会社のやり方が知りたいので、進んで出向に行きたいというスタッフもいます。そういう人には大いに出向に行ってもられえば良いと思います。一種の武者修行ですね。

 

でも、そうでないスタッフには、自社でゲーム開発ができる環境を作ってあげるべきだと思います。中小のゲーム開発会社で、どうすればそれができるのかは、まだ分からないのですが。

 

まとめと言いつつ、あまりまとめになっていないのですが、まあ、いつものことなので(^^;、この辺で。

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