新型コロナウィルスは様々な業界に影響を与えています。ゲーム業界もその一つです。開発者で実際に新型コロナに罹った方もおられますし、緊急事態宣言を受けて、ゲーム業界での働き方も変化しています。
ゲームは巣ごもり需要があるので影響はないだろう。むしろ伸びるのではないか。
という意見もありますが、私自身はそうは考えていません。いや、ゲームの需要そのものは伸びると思いますが、ゲーム開発の現場はしばらくは混乱が続きそうです。
私の知っている狭い範囲での話ですが、現在のゲーム開発の現場がどうなっているのかを記事にしてみます。
- 出向の減少と打ち合わせの変化
- ゲーム業界で働く人々の種類とテレワーク
- 仕事がなくなる業務委託、派遣社員、アルバイト
- CEROの休業の影響
- アーケードゲームの不振
- 開発者向けの交流会や勉強会の中止
- 開発会社の苦境
- 巣ごもり消費によるゲーム需要
- 最後に ー 離れて一緒に遊ぼう #PlayApartTogether
出向の減少と打ち合わせの変化
先日、ゲーム業界の出向について記事にしました。ところが新型コロナウィルスの影響で、出向は急激に減りつつあります。
あれほど「出向でないと進められないから」といっていた会社が、パタっと「持ち帰りでお願いします」といわれるようになったのですから、今までの出向前提の話は何だったんだ、とちょっと不思議な気もします。
打ち合わせや営業も変わりました。
以前は気軽に「○○日に訪問して、打ち合わせを」といっていたのが、「どうしても打ち合わせが必要な場合は、最少人数で訪問してください」に変わり、最近はSkypeやZoomでオンラインミーティングになりました。
訪問しての打ち合わせはほぼなくなりました。別にこれは悪いことと言う訳でもなく、先日、知り合いの開発会社の社長さんと打ち合わせ(オンラインで)をしたのですが、移動時間がないので仕事は捗る、と仰っていたくらいです。
ただ訪問することができなくなったので、新規の営業には苦労しているとのことでした。これについてはまたあとで詳しく記載することにします。
ゲーム業界で働く人々の種類とテレワーク
ゲーム会社で働く人といっても、働き方は様々です。
- 正社員
- 契約社員
- 派遣社員
- 業務委託
- アルバイト
ざっと分けるとこれくらいの雇用形態があります。そしてほとんどの人が、ゲーム開発会社の中で仕事をしていました。業務委託の場合でも客先常駐、いわゆる出向という形で、開発会社の中で働くことが大半でした。
それが一転して、会社の外で働くことが求められるようになりました。在宅勤務ですね。いわゆるテレワークです。
もちろんいきなりテレワークになったのではなく、最初は時差出勤がメインでした。出社時間をズラすことで通勤ラッシュを避け、新型コロナに罹らないように注意しよう、くらいの動きでした。
ところが緊急事態宣言以降、多くの開発会社がテレワークを導入しました。自宅にPCを持ち帰り、VPNやFTPでデータ納品をし、連絡はチャットツールを使用する、という形式です。
もちろん今でも、
- 時差出勤
- 管理職やリーダー職のみ出社
- 隔日やローテーションで出社
という取り組みで進めている開発会社もあります。
いずれにせよ、出社を減らすなり時間をずらすなりして、スタッフ同士の接触を避ける働き方に変わりました。そしてそのことで、仕事がなくなってしまう人達も出てきたのです。
仕事がなくなる業務委託、派遣社員、アルバイト
仕事がなくなってしまった人達というのは、主に業務委託や派遣社員、アルバイトの人達です。
あるゲーム開発会社では、全スタッフのテレワーク導入が決まりました。プロジェクトのリーダーは、フリーランスの方にもテレワークに移行してもらおうと上司と交渉を重ねました。ところが諸事情でどうしても開発機材を貸し出すことができず、泣く泣くあきらめたそうです。
上記は私の知人から聞いた一例ですが、他にも似たような話はたくさんあります。
- プロジェクト中止でアルバイトは解雇
- テレワーク移行で指示を出す人が居なくなるので派遣契約終了
- 自宅待機になり給料が6割(休業手当)に
巣ごもり消費で需要が伸びるといわれているゲーム業界で、こういう状況が発生しているのは複数の理由があります。
CEROの休業の影響
理由の一つはCEROの休業です。
政府の緊急事態宣言を受け、CEROは2020年4月8日から5月6日までの休業に踏み切りました。CEROとはコンピュータエンターテインメントレーティング機構の略で、ゲームの審査を行う特定非営利活動法人です。
CEROは発売前のゲームを審査するため、守秘義務の関係上、在宅での審査ができないそうです。そしてCEROでのゲームの審査は事実上必須になっています。過去に審査が通過したあとに再審査になり、その期間、出荷が停止されたゲームもありました。
CERO休業が5月6日で終了するのなら、それほど大きな影響はないのかもしれません。ただ現状ではCEROの休業が、緊急事態宣言で終わるのかどうかは分かりません。今の状況だと延長の可能性もありそうです。
ゲームメーカーも発売スケジュールの見直しや、先行きの不透明缶から、開発を見合わせているのが現状です。いや、開発を見合わせているというよりは、見通しが不透明で判断しかねているという状況でしょうか。
もちろん影響のないプロジェクトもあるのですが。
アーケードゲームの不振
CEROの休業は一時的な問題といっていいでしょう。発売時期によってはまったく影響のないプロジェクトもあります。
ゲーム業界でもっとも影響を受けているのはアーケードゲームです。
アーケードゲームはその収益構造から、新型コロナウィルスが流行する前から不振でした。一番大きな問題は消費税です。
ワンコイン=100円で遊ぶことが前提のアーケードゲームは、消費税を添加することができません。消費税が3%から5%、8%、10%と上がっても、ずっとアーケードゲームは1プレイ100円です。
慢性的な収益構造の問題に加えて、今回の新型コロナの影響で一時的に休業を余儀なくされているゲームセンターが多くあります。
新型コロナの影響でアーケードゲームのユーザーが離れてしまえば、アーケードゲームの不振は続き、開発から手を引くメーカーやデベロッパーも出てくるでしょう。
開発者向けの交流会や勉強会の中止
開発者向けの交流会や勉強会も相次いで中止になっています。3月に予定されていたGDC(Game Developers Conference)や6月のE3(Electronic Entertainment Expo)も中止になりました。
実はGDCやE3くらいになると、あまりにも規模が大きすぎて、私のような業界の端っこにいる開発者には影響がよくわかりません(^^;
直接的に影響があるのは、小規模な開発者同士の交流会や勉強会です。
関西でもっとも大規模なゲーム開発者の交流会は、GCC(Game Creators Conference)でしょうか。GCCについては以前に記事に書いていますが、3月予定されていたこの会も中止になりました。
GCCはゲーム開発者向けの勉強会です。中止になったことで開発の勉強ができなかったこと、知見が得られなかったことが問題なのではありません。開発者同士の交流ができなかったことが問題なのです。
開発会社の苦境
ゲーム開発会社が仕事を請けるための手段はいくつかあります。手段というよりは道筋とか繋がりというべきでしょうか。
メーカーからの一次請けの大手開発会社であればともかく、孫請けやひ孫請けの小規模な開発会社が、仕事を確保する方法はだいたい2つです。
- 知り合いからの紹介
- 交流会への参加
知り合いからの紹介は説明する必要はないでしょう。交流会への参加は早い話が営業です。
営業というと一軒一軒会社や個人宅をを訪問して、という訪問営業を思い浮かべる人も多いと思いますが、ゲーム業界ではそういう訪問営業はありません。電話でのテレアポもなく、飛び込み的な要素があるのは、メール営業くらいでしょうか。
メール営業は私自身も過去にやったことがありますし、今でもメール営業を受けることはあります。でも、成功する可能性はかなり低いといっていいでしょう。
可能性があるのは交流会に参加して名刺交換を行い、その後に直接訪問して、という相手に直接会うタイプの営業です。
GCCはゲーム開発者向けの大規模な勉強会ですが、会の最後に懇親会があり、そこでの交流を目的にしていた参加者も多数いました。実際に勉強会には参加せず、最後の交流会だけ参加する人も居たくらいです。
過去にはゲーム開発会社同士の営業を目的とした交流会もありました。それが今は交流会そのものがなくなり、直接相手の会社を訪問することは難しくなってしまいました。
巣ごもり消費によるゲーム需要
暗い内容ばかりを書いてしまったので、明るいことも書いておきます。
ゲーム業界にとって間違いなく追い風なのは、巣ごもり消費によるゲーム需要です。前述したように、開発の現場に多少の混乱はあっても、ゲームの需要はあきらかに伸びています。
新型コロナウィルスの大流行が始まって以来、モバイルゲームが爆発的な成長を見せています。Adjustのデータよると、2020年3月時点でのモバイルゲームのインストール数は、昨年同時期の2倍以上に上ることが判明しました。
(出典 ニューズウィーク日本版)
まあ、今はほとんどの人がスマートフォンを持っていますし、テレワークなどで自宅滞在の時間が長くなると、ゲームのひとつも楽しみたくなるのでしょう。業界の人間としては、普段あまりゲームをしない人に大いにゲームを遊んで欲しいと思います。
家庭用ゲーム機もNintendo Switchの品不足が続いています。「あつまれ どうぶつの森」のヒットも嬉しいニュースの一つですね(^^)
最後に ー 離れて一緒に遊ぼう #PlayApartTogether
いつもブログの最後はまとめの文章を書くのですが、今回は記事のまとめではなく明るい話題で締めたいと思います。
ゲーム業界の今のムーブメントが「離れて一緒に遊ぼう」です。#PlayApartTogetherというハッシュタグを見かけた人も多いかもしれません。
ゲーム業界が団結してCOVID-19に対抗する世界保健機関のメッセージを拡散し、#PlayApartTogetherキャンペーンを開始:時事ドットコム
ゲーム業界がWHOのメッセージを拡散するために打ち出したキャンペーンです。日本のゲームメーカーも賛同して、いくつかのゲームが賛同イベントを開催しています。
今は外出を控えて、自宅でゲームで遊ぶのが良いですね。ネットワークに繋がっていないゲームももう少ないでしょうし、離なれて居ても一緒に遊ぶことができます。
新型コロナの影響が落ち着くまでは、家の中でゲームで遊びましょう。
ゲームは離れていても一緒に遊べます(^^)
ではでは、今回はこの辺で。
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