永守重信氏というと日本が誇る名経営者の一人ですね。日本電産を創業し、戦略的なM&Aで、今なお会社を成長させ続けている名物社長です。
私が永守氏に興味を持ったのは、そのハードワーカーぶりからです。
- 1日の労働時間は16時間
- 休みは元旦の午前中だけ
生活に必要な睡眠や入浴などに8時間を割り当てて、それ以外の16時間はずっと仕事をしておられるようです。そして休みは1年365日のうち、元旦の午前中だけです。
過労死とかワークライフバランスという言葉が、空虚に感じるレベルのハードワーカーですね。その永守重信氏の語録を集めて編集したのが本書になります。
- 永守重信氏と日本電産という会社
- 永守語録 休みたければ辞めればよい
- 永守語録 すぐやる、必ずやる、出来るまでやる。
- 永守語録 上司は部下に対する御用聞きにならなければいけない
- まとめ ー 正しいのかどうか分からない
永守重信氏と日本電産という会社
日本電産株式会社は京都に本社を置く電気機器の製造会社です。HDDなどに使用する精密小型モーターに強く、世界シェアは85%を超えて常にトップを維持しています。
永守氏は複数の電気機器会社に務めたあと、1973年に日本電産を創業しました。社員数はわずか4人で、本社は永守氏の自宅、工場は借り物のプレハブ小屋だったそうです。
創業当初は仕事が受注できず、経営に苦しんだ時期もあったようですが、永守氏はアメリカに単身乗り込み、3Mから製品の大量発注を獲得して経営を起動に乗せました。その後は、オムロンからの融資や、経営が低迷している会社を買収して建て直すなどの手法で、日本電産という会社を大きく成長させました。
ユニクロの創業者である柳井正氏が、私の先生であり、唯一尊敬する経営者、という発言をされています。日本を代表する経営者の一人といっていいでしょう。
永守語録 休みたければ辞めればよい
永守氏の言葉で、一番有名なのはこの言葉ではないでしょうか。でもこの本には掲載されていません。それに近い言葉は掲載されています。
「普通の再建の仕方は間違っている。『年齢が高いから切る』とか『能力が低いからいらない』なんて僕は言わないよ。怠け者にはやめてもらうというだけだ」
・・・難しいですね。正しいのかどうか、書いていて判断に悩みます。
年齢や能力で社員をクビにする会社は存在するでしょう。営利企業であれば当たり前のことなのかもしれません。でも永守氏はそれはしないと断言しておられます。永守氏がやめてもらうと言っているのは怠け者だけです。どういう状態の社員を怠け者と定義しているのかはわかりませんが。
永守氏は再建屋として有名です。技術はあるが、業績が上がっていない企業を次々に買収し、数年で立て直して日本電産という会社を大きくしてきました。
企業を立て直すときの方法として、まっさきに思い浮かぶのがリストラですが、永守氏は絶対にそれをしません。希望退職も転職支援も永守氏の再建策とは無縁だそうです。永守氏が厳しい目を向けるのは、欠勤しがちだったり、遅刻が多かったりというやる気のない社員だけだそうです。
永守語録 すぐやる、必ずやる、出来るまでやる。
休みたければ辞めれば良い、という言葉の次にこの言葉を書くと、どれだけモーレツ社長なんだ、と思われるかもしれません。
でも、本を読むとその言葉が誤解であることが分かります。2020年には日本電産の残業をゼロにすると宣言し、産業ロボットやスーパーコンピュータを導入して仕事の効率化をはかっています。
社員の働き方を改革し、そのために1,000億円以上の費用を投入するそうです。単純な長時間労働だけでは、企業を強くしていくことはできないと考えておられるのかもしれません。
永守語録 上司は部下に対する御用聞きにならなければいけない
上司の重要な仕事は「悪い報告を早く上げさせる」ことです。これは心から納得できますね。誰の言葉だったのかは忘れたのですが、
「良い報告は明日の朝にしろ。悪い報告であればいつでも俺を叩き起こせ」
といった将軍がいたそうです。
悪い報告というのは誰でも上司にしづらいものです。でも重要性でいえば圧倒的に悪い報告を先にしないといけません。
ふんぞり返って部下の報告を待つのではなく、自分から常に聞きに行き、悪い報告があればすぐに対応する。
上司としてはそういう姿勢が大切なのでしょう。
まとめ ー 正しいのかどうか分からない
歯切れの悪い言葉で申し訳ないのですが、正しいのかどうか分かりません。
日本経済新聞や日経ビジネスなどで、日本の名経営者のランキング一位に選ばれる人です。その言葉は読んでいて心に響くものがあります。間違っているはずなどないのでしょう。
でも、読むと悩んでしまうのはなぜでしょうか。正しいとは思うのです。たった4人で創業した会社を、世界規模にまで成長させた名経営者の言葉です。社会人として、そして経営者として、正しいことを話しておられるのでしょう。
でも、それでも。
- これでいいのかなぁ
- 会社という組織は何なのだろう?
と違う方向で悩んでしまうのは、私の器が小さいからでしょうか。
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