歴史小説が好きで、それが高じてランキング記事まで作成しちゃったのですが、中でも好きなのが鈴木輝一郎氏の四人シリーズです。
主要登場人物は信長、秀吉、家康、光秀の四人で、この四人が強敵と戦いながらドタバタ劇を繰り広げる、というのがお約束の展開です。今回は長篠の戦いが舞台なので、強敵として登場するのは武田勝頼ですね。
(出典 Amazon)
武田勝頼は武田信玄の影響もあり、あまり評価が高くない武将なのですが、史実では武田信玄が武田家を率いていた頃よりも領地は広がっています。戦闘においては信玄よりも能力が高かったという意見もあり、最近では再評価されている武将でもあります。
四人の中でダントツにおもしろいのが信長
前作である桶狭間の四人のレビューでも書いたのですが、主役級の四人の性格はだいたい決まっています。
- 織田信長 神出鬼没、自分が基準、変なヤツ
- 羽柴秀吉 銭金の調達が上手い。戦下手。一人だけ名古屋弁
- 徳川家康 真面目で苦労人。武芸の達人
- 明智光秀 不良老人。鉄砲が上手い。博打好き。
この中でも文句なしに一番おもしろいのは信長です。居ては行けないはずの場所に突如出現したり、無理難題を言い出したりします。
副題にもなっている「信長の難題」の正体は、織田軍の兵士を一人も損ずることなく武田に勝て、というものです。
もちろん史実では信長はそんなことは一言も発言していません。内容を考えても実現不可能な題目なのですが、それを言い出すのが「四人シリーズ」の主役の一人である織田信長なのです。
長篠の戦いが起こるまでの状況
長篠の戦いは、武田勝頼が徳川家康が支配していた長篠城を攻めたことが発端の一つです。当時の長篠城の城主は奥平貞昌(後の信長から偏諱を受け、奥平信昌と改名)で、武勇に優れた武将として有名です。
奥平貞昌はわずか500の手勢ながら、1万5千を要する武田勝頼の軍勢を退け続けます。この長篠城の攻防戦で有名な鳥居強右衛門のエピソードも生まれています。そしてその長篠城に後詰として救援に来たのが、徳川家康とその同盟者である織田信長です。
史実では織田信長は武田家を滅ぼすつもりで大軍を率いて援軍にきたのですが、小説では冒頭のようなセリフで、残りの三人に難題をふっかけるというところから物語がスタートします。
三人の回答がそれぞれの性格を表している
織田信長の、一兵も損ずることなく勝て、という指示にそれぞれ独自の反応をします。
「おまかせくりゃーせ!」
と調子の良い返事をし、根拠もなく信長に迎合する戦下手の羽柴秀吉。
「ふむ。しばしお待ちを」
といって、そろばんを弾いてそれらしく計算しながらも、実際はあまり深く考えていない不良老人の明智光秀。
(おことわりいたす)
と心の中だけで返事をし、実際には口に出すことなく苦労を背負い込む徳川家康。
そして三人を率いて戦いに望む信長は、いつものように神出鬼没でありながらも、意思疎通がまったく出来ない発言をし、そして要所要所では逆に核心をつく発言をしたりします。
「アレがソレでナニだからヤ」
さて、この信長の発言はどうしましょうw
まとめ ー 楽しく読める読める歴史小説
四人シリーズは最初に読む歴史小説として良いかもしれません。読みやすく、そしておかしな小説です。おかしいというと語弊があるかもしれませんが、四人のキャラクターが強烈なので、サクッと楽しく読める小説であることは間違いありません。
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