業務委託における請負契約と委任契約の違い。例を上げて説明します

雑学

業務委託、という言葉には難しいイメージがあるかもしれませんが、実際にはそれほど難しいことはありません。

  • ゲームメーカーがゲームの開発を開発会社に委託する
  • ゲーム開発会社が別の会社に仕事を依頼する
  • ゲーム開発会社がフリーランスに仕事を依頼する

私が仕事をしているゲーム業界だと、上記のようなケースで業務委託契約を締結します。

 

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ブログを書いている方だと、自分のブログに誰かに寄稿を依頼する場合でも、業務を他者に依頼しているので、正確には業務委託をしていることになりますね。

 

業務委託の種類

契約には13種類があるといわれています。一般的に典型契約と呼ばれますが、そのうち覚えておく必要があるのは、請負、委任、準委任の3種類です。

  • 請負 成果物を納品し、対価として報酬を得る
  • 委任・準委任 依頼された業務を行い、対価として報酬を得る

委任と準委任契約の違いは法律を扱うか否かです。法律を扱うものを委任契約、それ以外のものは準委任契約になります。

 

請負契約とは?

成果物を納品して対価を得るのが請負契約です。

フリーランスのプログラマーが給与計算ソフトを作成し企業に納品する、という場合は請負契約になります。この場合、「給与計算ソフト」が成果物で、それを完成させて企業に納品することで対価を得るわけです。

 

委任・準委任契約とは?

分かりやすい例を上げると、医者と患者の関係は準委任契約が成立するといわれています。医者は患者に対して何かを完成させて納品するわけではありません。最善を尽くして患者を助けることが医者の仕事です。

 

ただ仮に患者が末期のガン患者で、どんなに医者がベストを尽くしても助からないケースもあります。そういう場合でも、助からなかったから報酬はなしね、というわけには行きません。お医者さんも自分の生活がありますからね。

 

上記のお医者さんのケースのように、成果物の納品などではなく、最善を尽くして業務を遂行すること条件に結ぶ契約を委任・準委任契約といいます。

 

ちなみに「最善を尽くすこと」を法律では善管注意義務と呼びます。善良な管理者の注意義務、という意味ですね。

これを怠った場合、過失があるとみなされて、契約解除や、最悪の場合は損害賠償請求を受ける可能性もあります。成果物がないから責務が軽いというわけではないのでご注意を。

 

請負契約と(準)委任契約をいくつかの例えを上げて分類

言葉の説明だけだと分かりにくいと思いますので、いくつかケースを上げて分類してみます。

請負契約に分類されるケース

  • ゲーム開発会社がキャラクターモデルの制作を協力会社に依頼
  • ブロガーがブログに載せるアイキャッチ画像を知り合いのデザイナーに依頼
  • 家を建てたい人が自宅の建築を工務店に依頼
  • システム開発会社がフリーランスプログラマーに受発注システムを依頼
  • スイミングスクールの運営会社が生徒用の水着の制作を外部に依頼

上記は全て請負契約になります。成果物が決められていて、それを納品することで対価を得るケースですね。

 

たとえば最初のゲーム開発会社のケースだと、成果物がキャラクターモデルになります。協力会社はキャラクターモデルを制作して納品することで報酬を得るのです。

この場合、契約書には、制作するキャラクターの数や、納品日、報酬などを記載します。

 

委任(正確には準委任)契約に分類されるケース

  • ゲーム開発会社が1ヶ月間業務に参加してもらうことを協力会社に依頼
  • ブロガーが1年間の間、ブログの原稿の校正を知り合いのライターに依頼
  • 自宅を建てた人が自宅に不備がないか建築士に調査を依頼
  • システム開発会社がフリーランスプログラマーにデバッグを依頼
  • スイミングスクールの運営会社が、一定期間、水泳のコーチをフリーランスに依頼

委任契約は善管注意義務を前提に、業務を遂行する契約です。何かを納品するわけではありません。

 

ゲーム会社における準委任契約

ゲーム開発会社のケースでは、1ヶ月間、ウチのゲーム開発に従事してね、という契約のもとに協力会社に仕事を依頼します。もちろん実際にはその期間の間に色々と制作して納品するのですが、成果物に対して責務を負うのではありません。

 

この場合の契約書にはアサインするスタッフ数と期間、そして報酬を記載し、成果物は明記しません。記載するにしても「○○に付帯して出来上がった成果物を随時納品する」くらいでしょうか。

 

ゲーム開発の場合、こういう契約は成果物が明確に定められていない開発初期のときに締結することがあります。成果物は明確に定められていないけど、とにかく人をかけてプロトタイプを制作しないと、といったケースですね。

ただゲーム開発の場合、準委任契約はあまり多くありません。私の体感ですが、請負契約と準委任契約の割り合いは9:1くらいでしょうか。もっと委任が少ないかな?

 

スイミングのコーチにおける準委任契約

スイミングスクールのコーチも同じことがいえます。

スイミングのコーチの場合、生徒さんを教えても、生徒さんをスイミングスクールの運営会社に納品するわけではありません。契約で定められた期間に、善管注意義務を前提に、生徒さんにきちんと水泳を教えれば大丈夫です。

 

ただ水泳の場合は注意すべき点がひとつあります。それはもしものケースがあることです。

医者がミスで患者を死なせてしまえば、訴えられたりする可能性があるように、水泳のコーチも、もしものときに訴えられたりする可能性があります。ですので、契約書には十分にご注意ください、マスクド・ニシオカさん。

 

 

ソフトウェアのデバッグも準委任契約

他にソフトウェア開発におけるデバッグも準委任契約になります。

 

デバッグはプログラムにバグがないかチェックする作業ですが、プログラムそのものは基本的に完成しているので、プログラムを成果物として納品するわけでありません。

 

プログラムに対してバグを発見し報告する、という業務に対して責務を負うの準委任契約になります。仮にチェックしたプログラムが凄く優れていて、バグが全くなかったとしても、デバッグ会社はデバッグという業務を遂行したので、報酬は支払うことになります。

 

もしデバッグ作業後に製品がリリースされて、その後に大きなバグが見つかった場合は、デバッグ会社は善管注意義務を怠ったとして、訴えられる可能性があります。

 

まとめ ー 請負契約と委託契約の違い

請負契約と委任・準委任契約について、私の知っている知識を基に記載してみました。

契約書をチェックするような立場になってから、必要に迫られて法務を勉強するようになりました。

 

それでも「多少は法務に詳しい」というだけで、実際はただの素人です。

もし、このブログを法律の専門家の方が読まれて、間違っとるわ!、という点がありましたら、遠慮なくご指摘いただければ幸いです。速攻で修正します!

 

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