パソコンの古いファイルを整理していたら、過去に参加したセミナーの資料が出てきました。公開して良いものなのかどうか分からないので、誰のセミナーだったのかは伏せておきますが、大手メーカーのプロデューサーの方のセミナーでした。
あらためてセミナーの資料を読み直してみたのですが、非常にわかりやすくて参考になります。
ブログでそのセミナー内容を全て紹介するのは差し障りがあるでしょうから、印象的なところにだけ絞って記事にしてみます。
その内容は、プロジェクトはなぜ失敗するのかと、犬小屋と高層ビルについてです。
プロジェクトはなぜ失敗するのか?
なぜプロジェクトは失敗するのでしょうか。
それが分かったら苦労しない、という声が聞こえてきそうですが、理由はきちんとあると思います。
それはプロジェクトを構成する各要素の細かなズレです。
プロジェクトが変化する要素を見てみましょう。
- 仕様の追加・変更
- タスク漏れ→あとから作業が追加
- タスクの見積もりミス→タスクを消化するための作業が増大
- 作業時間のエラー→会議などで別作業での時間が増加
- 環境のエラー→パソコンの故障、ソフトウェアの不具合
- 人員計画のミス→人数が増やせない
- 人員の能力不足→想定よりアサインスタッフの能力がない
- 人員の不足→スタッフの欠勤、他プロジェクトへの異動、退職など
- 品質マネジメント→品質が上がらず作り直し。もしくは作業時間の増大
- 技術的な不可抗力→プログラムで実装できない。ポリゴン数の処理問題など
思いつくままにプロジェクトを不安定にする要素を書き出してみました。他にもプロジェクトを不安定にする要素はあると思いますが、今回はひとまずこれだけで話を進めます。
さて、これからが重なってプロジェクトに及ぼす要因はどれくらいでしょうか。
- 仕様の追加・変更 1.2
- タスク漏れ 1.4
- タスクの見積もりミス 1.3
- 作業時間のエラー 1.2
- 環境のエラー 1.4
- 人員計画のミス 1.5
- 人員の能力不足 1.2
- 人員の不足 1.3
- 品質マネジメント 1.4
- 技術的な不可抗力 1.3
まったくテキトーに数字を割り振ってみました。それぞれの要素がプロジェクトに及ぼす影響はさほど大きくはありません。でも、これらをかけ合わせてみると・・・
1.2 x 1.4 x 1.3 x 1.2 x 1.4 x 1.5 x 1.2 x 1.3 x 1.4 x 1.3 = 約15.63
かなりテキトーな計算で恐縮ですが、すべての要素が悪い方向にずれていくと、プロジェクトは失敗に向けて大きく傾くことになります。
犬小屋と高層ビルの違い
これだけの大きなプロジェクトの傾きはどうして発生するのでしょうか。それはプロジェクトの全体像を見誤っているからだと思います。作るものが何なのかがちゃんと見えていないのです。
犬小屋を例に考えてみましょう。
犬小屋を作成するプロジェクトの要素を書き出してみます。
- 一人で作成できる
- 2、3日で作成できる
- 全ての作業を自分でできる
- 全ての材料を自分で揃えられる
- 一つ一つの作業にかかる時間が予測できる
- 最悪、全て作り治してもそれほど時間はかからない
こんなところでしょうか。まあ、作るのが犬小屋であれば、トンカチを持ったことがない人でも2、3日あれば作れるでしょう。
では、高層ビルの場合はどうでしょうか。
- 完成までに途方もない人数が必要
- 完成までにかなりの日数が必要
- 各工程に専門職が必要
- 建築資材は専門家に依頼する必要がある
- 各工程にかかる時間の予測が難しい
- 作り直しは不可能
上の犬小屋と比較して要素を書き出してみました。当たり前ですが、高層ビルは簡単にできるものではありません。実際には強度計算や建築設計、各種資材の調達から建築費用まで、犬小屋とは比較できないくらい考えないといけない要素が出てきます。
ゲーム開発だとなぜか高層ビルだとは思わない
ところが不思議なことに、ゲーム開発だとなぜか高層ビルだとは思わない人たちが存在するのです。
ゲームソフトの開発は高層ビルに匹敵するくらい、様々な要素が絡んできます。それなのになぜかそれを考えずに始めてしまう人たちが居るのです。
高層ビルに話を戻します。
高層ビルを建築するときに考えないといけない要素は何でしょうか。
- 地盤調査
- 資金計画
- 外観設計
- 内装設計
- 建築設計
- 強度計算
- 耐震設計
- 人員計画
- リスク計算
- 工数見積もり
私は建築の専門家ではないので、外しているかもしれませんが、高層ビルを建てるときに考えるべき要素を列挙してみました。
高層ビルの建築なんて、必要なことを片っ端から考えて慎重に進めないと、簡単に建造できるものではありません。
ゲーム開発もそれと同じです。
数億円の費用と数年間という期間、そして延べ人数で3桁を超える人員を投入して完成させるのが今のゲーム開発です。考えないといけないことは山ほどあるのに、なぜかゲーム開発だと「何とかなるだろう」で始めてしまう人が存在するのです。
その結果、待っているのは前述したような「細かなズレ」がかけ合わさったことによる作業工数の増大と、それを解消するためのプロジェクトに入っている人員のデスマーチです。
まとめ ー 高層ビルなのか一戸建てなのか犬小屋なのか
ちょっと調子に乗りすぎて、2000文字を突破してしまいました(^^;
やはり自分が携わっている仕事になると、ついつい書いてしまいますね。
あまり長くなってもアレなので、話をまとめます。
重要なのは「何を作るのか」をしっかり把握することです。高層ビルなのか、犬小屋なのか、それとも一戸建てなのか。
ゲームソフトも1日で作れるミニゲームから、数年かけて作るAAAタイトルまで様々なものがあります。これから作るものが何なのかを、きちんと把握することが重要です。
そして作るものが高層ビルのような大作ソフトウェアだったとしたら・・・
それこそ高層ビルを作るときに綿密に事前計画を立てるように、計画をきちんと構築することが大切です。
そしてプロジェクトは常にイテレーション重視で、細かくPDCAを回すことを・・・となると話が長くなるので、今日はこの辺で。
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