先日、あるゲーム開発会社の社長と打ち合わせをしていました。その会社の社員数は一桁で、創業してまだ数年の会社です。
社長さん自身は15年以上の業界経験があるのですが、個人として活動し始めて7年、法人成りして3年とのことでした。
一人で事業を始められて、そこまで人数を増やされたのですが、すごい、と感じたのは、社長さんが「新卒しか採用しない」と言い切っていたことです。
考えた方として稀有というか、非常に珍しいと思います。
なぜ新卒しか採用しないのか?
新卒しか採用しない理由は3つあるそうです。
- コストが低くて済むこと
- 業務にマッチしたスキルを伸ばすことができる
- 転職する可能性が少ない
私も採用担当をしているのですが、新卒しか採用しない、という考え方は非常に新鮮でした。どうしても即戦力になる中途採用をメインに考えてしまうので。
社長さんが新卒しか採用しないといっていた理由について、ひとつひとつ解説してみます。
コストが低くて済む
1つ目は採用コストが低くて済むことです。ほとんどのゲーム会社では、新卒よりもスキルのある中途を積極的に採用します。どこの企業も即戦力が欲しいので、当たり前のことだといってもいいでしょう。
ところが中途採用にはお金がかかります。人材会社から採用すれば、想定年収の35%を支払うのが一般的です。仮に年収400万円の人を採用すれば140万円を人材紹介会社に支払う必要があるのです。
かといって媒体に広告を出せば、これも80万~120万円くらい費用がかかります。それだけ費用をかけて、媒体の場合は良い人の応募があるかどうかわからないので、まったく採用できないこともあります。
Web専門の媒体だと数万円で求人広告を出せたりもしますが、これも採用できるかどうかは確実ではありません。
ところが新卒の採用は容易です。ゲーム系の専門学校に求人を出せば、一定数の応募が見込めます。私が在籍している会社は無名の社員20人前後の会社ですが、それでもゲーム系の専門学校から年間3桁を超える応募があります。
業務にマッチしたスキルを伸ばすことができる
ゲーム開発に必要なスキルは様々です。デザイナーと呼ばれる職種だけで考えたとしても、職種は多岐にわたります。
- モデラー
- リガー
- モーションデザイナー
- 2Dデザイナー
- イラストレーター
- エフェクトデザイナー
モデラーでもキャラクターと背景で作業内容が異なってきますし、キャラクターの中でもソシャゲ向きのローポリと、コンシュマー向けのハイポリだとスキルが違います。
新卒で採用したときから、業務で使うスキルだけを教えていけば、自社の業務にマッチした人材に育て上げることができるのです。
転職することが少ない
ゲーム業界は転職が多い業界です。私自身も数社経験しています。そして中途採用者は転職する確率も高いのです。
もちろん新卒で採用したスタッフが、まったく転職しないという訳ではありません。転職する可能性ももちろんあります。
でも、新卒でスタッフを採用すると、必ず何名かは全く転職をしようとしない人が存在します。経験則的な話になってしまいますが、新卒で入った会社から転職しない人が一定数存在するのです。
まとめ ー 新卒しか採用しないのも一つの考え方
採用担当者として、新卒採用より経験のある中途採用を優先していました。
ところがその社長さんの話を聞いて、新卒しか採用しないのも一つの優れた考え方だと感じました。
その社長さんは年に1名-2名を新卒として採用し、ご自身で手塩にかけて育てているそうです。学校から直接採用すれば紹介料は不要ですし、離職する可能性も低く、業務にマッチした人材に育ってくれるので、非常に理にかなっていますね。
もちろん欠点も一つだけあります。
それは即戦力にはならないことです。まあ、これは仕方ないかな。
それでも採用の一つの方法として優れていると実感した、というお話でした。
コメント