ニワトリはいつもハダシ 両A面 火浦功の「同じ話」を載せた異色の作品

書評・読書

ライトノベルという言葉がいつからあったのかはよく把握していません。でも、その言葉が一般的になる前から、よく読んでいたのが朝日ソノラマ文庫でした。

 

中でも好きだった作家が火浦功です。

  • 高飛びレイクシリーズ
  • スターライトシリーズ
  • トリガーマン!1

などをよく読んでいました。そういえばトリガーマン!1は2が何十年経っても出ていないような気がするのですが、気にしないことにしましょう。

 

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両A面という不思議なサブタイトルが付いていますが、このサブタイトルが本の構成を上手く現しています。この本には同じ話が二回掲載されているのです。

 

ニワトリはいつもハダシのあらすじ

SF作家の壬生マコトはスランプに陥り、小説の執筆を進めることができずにいた。仕方なく?ゲーム機のコントローラーを手にしていると、担当編集者の沖田裕二にホテルに缶詰にされてしまう。

 

マコトはホテルで小説を執筆するわけでもなく、ずっと逃げ出す算段を考えていた。すると突然、窓からロープを使ってが侵入してきた。男はコルト・パイソンをマコトに突きつけ「ブツをどこに隠した」と詰問する。

 

殺し屋らしき男の肩にはなぜかニワトリが乗っていた。

 

男はマコトに詰め寄るが、担当編集者の沖田が部屋に入ってくると、部屋を間違えたことに気づき、ロープをたどって上の階へと去っていった。マコトは男の行動を小説のネタにしようと考え、男を後を追って上の階の部屋へと突入した。

 

その部屋のベッドには男の死体があった。 

そして死体の上になぜかニワトリが鎮座し、タマゴを温めていたのだった。

 

軽いノリで読めるハードボイルド(のような)小説

時折りハードボイルドを思わせるセリフが入りますが、基本的には軽いノリで読める作品です。憶測ですが、作者は物語のストーリーを決めずに書いているのではないでしょうか(^-^;

 

主人公である作家のマコトに銃を突きつけたのは、木暮譲次という名前で準主役といっていいキャラクターです。ニワトリの飼い主でもあり、刑事の近藤やマフィアのボスである周大人、そして政とシゲという刺客?と対決を繰り広げます。

 

このようなことを書くと、ちゃんとした小説のように聞こえますが、そんなことはありません。いや、そんなことはない、というのも変なのですが。

 

元作品+補完版という構成

両A面というサブタイトルの意味は、原作とそれに加筆修正した補完版を収録しているという意味です。早い話が同じ話が掲載されています。

 

なぜそんな構成になっているのかというと、原作のラストがあまりにもひどい衝撃的だったからです。SFマガジンに連載されていたのですが、ラストが掲載されたときにかなり物議を醸したそうです。

 

読んで見れば分かりますが、確かに物議を醸すラストです。

 

原作と補完版での大きな違いもやはりラストにあります。補完版でラストが大幅に書き変えられています。補完版では伏線の回収なども終わり、ちゃんとした小説として完結しています。

 

まとめ ー 原作で不完全燃焼だった人に

火浦功の作品はほぼ全て読んでいたのですが、新作がほとんど出ないこともあり、いつしかあまり読まななくなってしまいました。

 

この本も原作を読んだことはあったのですが、補完版は知りませんでした。読み終えて長い間忘れていた宿題をやり終えたような感じがしています。

 

おそらく今後も火浦功氏の新作は出ないでしょうから、こういうベスト?的な作品で楽しむしかないのでしょうね。

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