小学生の頃、自分が何になりたかったのかよく覚えていません。自分のことすら忘れてしまっているのに、ある友人がなりたいといった職業を今でも明確に覚えています。
小学生の頃のホームルームで「将来の夢」と題して、自分がなりたい職業を発表する機会がありました。
そのときに彼は、サラリーマンになりたい、と発表したのです。
小学校のホームルームにて
小学生なので、なりたい夢といってもたかが知れています。
- パイロット
- 野球選手
- 医者
- 警察官
- 看護師
- 教師
上記のような、アンケートを取ればランクインするような職業が大半でした。そして自分が何になりたいと発表したのかも覚えていないのですが、ある友人の発表だけを明確に記憶しています。
彼は、サラリーマンになりたい、と発表したのです。
そのときにクラスからは失笑が起きました。職業ですらなく、しかも志が低いことからの失笑だったのでしょう。でも私は笑うことができませんでした。
遊びに行った彼の家での出来事
私は彼と親しく、何度か彼の家に遊びに行ったことがありました。彼の家はいわゆる文化住宅で、風呂はなく、居間兼台所と奥に部屋がもう一つあるだけの作りでした。
そして彼の家はいつも父親が不在でした。でもその理由を聞くことは、小学生の私でもためらわれました。それは彼の父親が愛人を作って家を出てから戻っていない、という噂を聞いたことがあったからでした。
ある日、彼の家で遊んでいると彼の母親が手製のお菓子を出してくれました。ケーキの生地のようなカステラのような小麦粉を焼いたお菓子で、あまり美味しいお菓子ではありませんでした。ただ、友人が美味しそうに食べているのをみて、子ども心に「これは美味しそうに食べねば」と思って食べたのを記憶しています。
・・・早い話が、彼の家ではお菓子は工夫して作るもので、ケーキや和菓子を買うことではありませんでした。
ホームルームで最後に言った言葉
ホームルームで、彼がサラリーマンになりたい、と発表したときに失笑が起きました。それでも彼は堂々としていたので、失笑はすぐに収まりました。
先生は対応に困ったような印象で、二言三言、彼に声をかけたあとは、次の子に発表を変わるように促しました。でも彼は変わる前にもう一度言いました。
サラリーマンになって普通に働きたい。
彼にとっては普通に働き、普通に収入を得て、普通の家庭を築くことが夢だったのでしょう。
サラリーマンもいいよね。
最近は副業や兼業、フリーランスという言葉を良く耳にするようになりました。それでも、サラリーマンになりたい、といった彼の言葉を忘れることはありません。
彼とは中学生になると疎遠になり、高校は別々になったので、その頃から連絡が途絶えました。その後はどうしているのかまったく知りませんでした。つい最近、古い友人から、彼がある清掃会社の課長をしていることを耳にしました。そして奥さんと子どもが居ることも。
いいやん。
やったやん。
ちゃんとサラリーマン、やってるやん。
オレもサラリーマンやけど、気楽にやってるわ。
お互い良い歳になっちゃったけど、まだまだがんばろーぜ。
届くはずもない言葉を書いて今日のブログはおしまい。
たまにはこういうのもいいよね、ということで^^
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