ヤマカン、という言葉があります。カンに頼って物事を決めることをそういうのですが、この言葉の語源は戦国時代の武田信玄の軍師である山本勘助だったという説があります。
他にも戦国時代に生まれて、今でも使われている言葉はいくつかあります。今回は私の知っている戦国由来の言葉をまとめてみました。
ヤマカン
武田信玄の軍師といわれている山本勘助は、非常にカンがするどく、戦場での予測をよくよく言い当てたことから、物事をカンでいい当てることをヤマカンというようになったといわれています。
山本勘助とは別に、山師が鉱脈を掘り当てるときに、昔は勘に頼らざるを得なかったことから、山師のカンでヤマカン、という言葉が生まれたという説もあります。
三日天下
明智光秀が本能寺の変で織田信長を倒し、天下を取ったが長くは続かなかったことから、短期的な政権や先の短い権力者のことを三日天下というようになりました。
言葉としては三日天下ですが、明智光秀が実際に政権を握ったのは11日間でした。
天王山
天下分け目の天王山、という使われ方が多いと思います。
明智光秀と羽柴秀吉が戦った山崎の戦いですが、天王山の奪取が勝敗を分けたといわれています。戦国時代の戦闘では高所を確保したほうが有利でした。羽柴秀吉の軍師である黒田官兵衛が先に天王山を確保し、それが秀吉側の勝利につながったといわれています。
ただ実際には天王山の確保は勝敗には影響なかったという説もあり、名称が象徴的に使われているだけかもしれませんね。
洞ヶ峠
山崎の戦いから由来している言葉は多いですね。
明智光秀の与力大名である筒井順慶は、本能寺の変の後、当然のことながら光秀に味方すると思われていました。ところが光秀に味方する大名が少ないと判断した筒井順慶は、洞ヶ峠から兵を動かさず日和見しました。
このことから敵味方が鮮明でない様子を「洞ヶ峠」というようになったそうです。
一徹者
西美濃三人衆の一人、稲葉良通の法号は一鉄であり、稲葉一鉄という名乗りでも知られています。稲葉一鉄は頑固な性格だったことから「頑固一徹」や「一徹者」という言葉が生まれました。
元の木阿弥
筒井順慶の父である筒井順昭は早くに亡くなったため、筒井家の家老が相談して、容姿が似ている木阿弥という僧侶を影武者に立てました。
嫡男である筒井順慶が成長し家督を継ぐと、木阿弥は影武者の任を解かれ、元の僧侶に戻ったことから「元の木阿弥」という言葉が生まれました。
小田原評定
豊臣秀吉による小田原征伐のときに、北条家の家老で意見が対立し、結局最後までまとまらなかったことから、いつまで経っても意見がまとまらない会議のことを「小田原評定」というようになったそうです。
三本の矢
中国地方の戦国大名である毛利元就は、亡くなるときに兄弟を枕元に呼び、
「一本の矢であれば容易く折ることができるが、三本束ねると折ることは難しい」
「兄弟三人が仲良くして、毛利家を守り立てるように」
と遺言したことから、力を合わせて物事に当たることを「三本の矢」というようになりました。
というのは俗説です(^^;
毛利元就の長男、毛利隆元は毛利元就よりも早くに亡くなっているので、上記の話は逸話ですね。実際は三人に当てて元就が書いた手紙が残されていて、そこに三本の矢の話が記載されています。
宰相殿の空弁当
これは日常的に使っている人を見たことはないのですが、戦国由来の言葉なので、一応紹介しておきます。
関ヶ原の戦いで毛利家の武将である毛利秀元は、大軍を率いて関ヶ原に陣を敷きました。ただ毛利家は毛利秀元が大将だったものの、実質的には年長者である吉川広家が指導権を握っていました。
毛利秀元自身は戦いに参加するつもりだったのですが、吉川広家が徳川家康に内通していたため、軍を動かすことができませんでした。そのため秀元は味方から催促があっても軍を動かすことが出来ず、やむなく催促の使者にたいして「今は弁当を使わせている」と何度も返答したことから、急場しのぎの方便のことを「宰相殿の空弁当」といわれるようになりました。
安倍川餅
静岡県安倍川付近が発祥といわれているお菓子で、細かく切った餅に砂糖を混ぜたきな粉をまぶして食べるのが一般的です。
この安倍川餅は慶長年間に、徳川家康が安倍川上流にある金山を視察したときに名付けられたといわれています。地元の人が徳川家康にこのお餅を献上したところ、徳川家康はとても気に入り、餅の名前を尋ねました。
このお餅は安倍川の金な粉もちと申します
ととっさに答えたことから、安倍川餅という名前が広がったといわれています。
安倍川餅の誕生に、徳川家康が関わっていたとは興味深いですね。
まとめ ー 400年の前の言葉が残っているのは凄い
戦国時代というと400年以上前になるのですが、その時代の言葉が残っているのは凄いと感じます。
三日天下は実質的には11日だったとか、三本の矢は遺言ではなかったというのはあまり知られてないのではないでしょうか。個人的にはお殿様から元の僧侶に戻った木阿弥の心境を聞いてみたいところではあります。
戦国由来の言葉は他にもありそうなので、見つかり次第追記するようにします。実はもっとたくさんあるかと思ったのですが、意外に少なかった(^^;
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