風魔小太郎(ふうまのこたろう)というと、北条氏に仕えた忍者の棟梁というのが一般的な認識だと思います。忍者集団である風魔一族を束ね、身長が2mを超える筋骨隆々の大男で、眼光鋭く牙さえ生えていた、といわれていますが、この本に出てくる風魔小太郎は全く印象が異なります。
ゲームに登場する風魔小太郎も、忍者として描かれていることがほとんどですね。
(出典 戦国無双4)
でも、この本の小太郎は純真な青年です。いや、物語の冒頭で登場したときは数えで13歳なので、少年と言っていいでしょう。軍配者シリーズは三部作になっており、その一部の主人公がこの風間小太郎(かざまこたろう)になります。
(出典 Amazon)
忍者の棟梁である風魔小太郎が軍配者になっている辺りは、この小説のオリジナルの設定として楽しめば良いかと思います。
伊勢宗瑞と足利学校で学び軍配者へ
風間小太郎(かざまこたろう)は両親を亡くし、野良仕事や寺で奉公をしながら、妹である奈々を養っています。利発だった小太郎は、寺で行われている授業を、廊下で仕事をしながら理解してしまうくらいでした。それに目をつけた伊勢宗瑞は、小太郎を孫である千代丸の軍配者にしようと計画します。
この伊勢宗瑞はのちの北条早雲で、千代丸は元服後は北条氏康と名乗ります。ただ史実では伊勢宗瑞は北条氏を名乗ったことはなく、北条氏を名乗るのは二代目の氏綱からですね。この物語でも伊勢宗瑞として最後まで表記されています。
さて、その小太郎は軍配者として学ぶために足利学校へと赴きます。その途中で出会うのが四郎左でのちの山本勘助、足利学校で出会うのが曾我冬之助でのちの宇佐美定満?です。
軍配者シリーズの第三部はまだ読んでいないのですが、第二部は記事にしていますので、もし良ければ読んでいただけると嬉しく思います。
純真な青年小太郎は想像できなかった
冒頭にも書きましたが、純真な青年の風魔小太郎は想像できませんでした。風魔小太郎が実在したかどうかはともかく、忍者の頭領というイメージが頭に染み付いていたので、それ以外のキャラクターがイメージできなかったのです。この作品はいい意味でそのイメージを壊してくれます。
伊勢宗瑞から内弟子のように学問を教わったり、足利学校に入ったときに他の男子生徒に襲われたり、初な少年である小太郎像というのが、私の頭の中にまったくなかったので読んでいて新鮮でした。
この辺りは作者の勝利という気がします。
梟雄として名高い北条早雲もそうですね。
この物語では伊勢宗瑞ですが、領民に慕われ、信義に厚い武将として描かれています。実際の北条早雲はかなり際どいこともやっているのですが、今川氏親との同盟はずっと守っているので、松永久秀のようなタイプの梟雄でないことは確かですね。
マンガ版の早雲の軍配者もあるよ
早雲の軍配者ですが、マンガ版が存在します。マンガを担当しているのはちさかあや氏で、絵のタッチがすごく作品にマッチしています。
第一話は無料で読めるのですが、読んでみて「あ、そうそう。こんな感じ」という言葉が出そうなくらいでした。小説をマンガ化した作品はいくつもありますが、これくらいイメージがマッチしている作品も珍しいですね。
まとめ ー 三部作の最後も楽しみ&一世代前も
軍配者シリーズの三部作の最後は謙信の軍配者なので、四郎左vs冬之助になるのでしょう。北条氏の青年軍配者の小太郎がどう絡んでくるのかは分かりませんが、それはそれで楽しみです。
最後にちょっと話がそれるのですが、戦国時代を扱った歴史小説というと、信長の桶狭間戦いから大坂夏の陣を扱ったものが大半です。西暦でいうと1560年から1615年ですね。
でもこの小説を読んでいると、それよりも一世代前の武将たちの活躍もおもしろそうです。北条早雲もそうですし、武田信玄の実父である武田信虎や、織田信長の父、織田信秀なども十分物語になりそうですが・・・需要はないかな(^^;
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