白状します。過去に自転車を盗んだことがあります。
今から20数年前のことです。会社の飲み会であまり飲めないお酒を飲んで、終電がなくなった私は自転車を盗みました。今回はその顛末をブログに書いてみます。
会社の飲み会で終電がなくなった
当時の私はまだゲーム業界に入る前で、小さなデザイン事務所にエディトリアルデザイナーとして勤務していました。
エディトリアルデザイナー、というと格好いいですが、手がけていた本はほとんどが電化製品のマニュアルで、テクニカルイラスト(家電のマニュアルによく載っている製品の線画)の作成や、PageMakerを使用して原稿の編集が主な作業でした。
その会社の何か記念の飲み会だったと思います。金曜日に、会社のスタッフ全員で飲んで、終電前に解散しました。
あまり飲めないお酒を飲み、上機嫌だった私はフラフラと店を出て歩き始めました。お酒が飲める同僚は二次会、三次会への繰り出して行きました。彼らはその後、朝まで飲んで始発で帰ったようでした。
私はそのまま帰るべく最寄りの駅までたどり着いたのですが、そのときに初めて終電がなくなっていることに気づきました。
考える力もなく線路沿いの道を歩き始める
そのときの私は酔いで頭が回っていなかったのでしょう。ふらふらと線路沿いを歩き始めました。線路沿いを歩いていれば、いずれ家に帰れるだろう。それくらいの考えでした。酔った頭では、電車でいつも40分かかる通勤時間が、徒歩でどれくらいかかるかを計算することはできませんでした。
時間にすれば数十分だと思います。私はすぐに自分の選択を後悔し始めました。歩いているうちに足が痛くなってきたのです。
頭の中では色々な選択肢がぐるぐると回り始めます。
- タクシーを拾う
- 友人に助けを求める
- 深夜営業の店に潜りこむ
- 会社に戻って寝る
そのどれもを私は選択しませんでした。
駅の駐輪場から自転車を一台失敬したのです。
自転車を漕いでいると道の反対からおまわりさんがやってきた
駐輪場で「鍵の着いていない自転車なんてないだろうなー」と思いつつも、自転車を物色しているとあっさりと鍵の着いていない自転車が見つかりました。
あとで返せば盗んだことにはならないだろう。足が痛くて歩けないし、ちょっとだけ借りよう
完全にアウトな言い訳を頭の中で考えながら、自転車に乗りました。自転車ほど素晴らしい文明の利器は存在しないなー、とテキトーなことを考えつつも快適にペダルを漕いでいました。
自転車を乗り始めて10分くらいのことだったと思います。道の向こうから自転車のライトが向かってくるのが見えました。この深夜に誰だろうとよく見ると、制服を着ています。
警察官の方が自転車でパトロールしていたのです。
血の気が引く、という経験を初めてしました。酔いはいっぺんに吹っ飛び、冷や汗がだらだらと流れ始め、頭の中では後悔という名の嵐が渦巻いてました。
その間も警察官がまたがる自転車はこちらに近づいてきます。Uターンして逃げ出そうものならすぐに疑われます。かといって、呼び止められて防犯登録をチェックされたら自転車を盗んだことがすぐにばれます。
私は観念して、そのまま自転車をゆっくりと進めることしかできませんでした。
天網恢恢疎にして漏らさず
結局、私は自転車泥棒として捕まることはありませんでした。
というのも警察官とすれ違う間際で、警察官の方は自転車を降り、ある建物へと入っていったのです。
それは交番でした。
警察官の方はちょうどパトロールを終え、交番へと戻ってきたところだったのです。逆の言い方をすれば、私は盗んだ自転車で交番の前を通ろうとしていたのです。
天網恢恢疎にして漏らさず、という言葉は本当だよなあ、とつぶやきながら、酔いが覚めた私は自転車を駐輪場に戻しに行きました。自転車を元の位置に置いたあと、再びゆっくりと線路沿いを歩き始めました。
自宅についたのは、それから4時間後のことでした。
コメント