デザイナーが間違った仕事をすると人が死ぬ

デザイン - 理論や小話など

私が社会人としての経歴をスタートしたのは、小さなデザイン事務所でした。

そのデザイン事務所にはとても厳しいデザイナーの先輩が居ました。今回はその先輩デザイナーから教えてもらったお話です。

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話の始まりは小さなデザイン事務所

私はゲーム会社に入る前にチラシやパンフレット、マニュアルなどを作成するデザイン事務所に勤務していました。社員数は4人という小さなデザイン事務所でした。ただ、協力会社から出向にきてもらったり、フリーランスで常駐していた方もおられたので、社内にはいつも10人前後の人が一緒に仕事をしていたと思います。

 

当時の私は下っ端のデザイナーだったので、先輩のデザイナーから色々と教えてもらいながら仕事を進めていました。

 

そのデザイン事務所には、とてもデザインに厳しい先輩デザイナーが居ました。先輩デザイナーはデザインスキルの非常に高い方で、クライアントさんから指名で仕事がくるくらいでした。ただ、仕事に厳しかったので、小心者の私はなるべく一緒に仕事をしないですむように立ち回ったりしていました。

 

 

先輩デザイナーがぽつりと言った言葉

ところがある日、その先輩デザイナーとがっつり二人で組んで仕事をすることになったのです。

 

内心は、「嫌だなあ。怒られるかな。早くこの案件が終わらないかな」
と思いつつも、先輩デザイナーからスキルを盗めるかも、と前向きに考えたりもしていました。

 

そして案件が始まる初日に、先輩デザイナーからランチに誘われました。

強面の先輩でしたが、仕事を円滑に進められるようにとの配慮だったのでしょう。

ただ二人ともそれほど喋りが上手い方ではないので、ランチは「ここは仏前か」と思うくらいの沈黙が続きました。

 

そのとき、ランチを食べていた定食屋のテレビで、あるニュースが流れました。

それは看護師さんが点滴に使う薬剤を間違えて患者が死亡したというニュースでした。

 

そのときに先輩デザイナーがぽつりと、
デザイナーが仕事してねえな」と言いました。

 

私にはまったく意味が分からなかったのですが、ランチの後で先輩デザイナーが解説してくれました。

  • 使う薬剤のラベルのデザインが非常に似ていたこと
  • 命に関わる薬剤のラベルを、なぜ同じデザインにしたのか
  • 作成したデザイナーは、過去の薬剤ラベルのデザインをチェックしていない
  • デザイナーであれば、見た目だけではなく何を伝えるのかも考えるべき

 

そうなんですよね。
デザインには2つの意図があって、

  • 見た目の綺麗さ
  • 伝えるべき内容

を考える必要があるのです。

 

デザインには2つの意図がある

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昨日の記事の画像で恐縮ですが、上記の画像だと、ボタンの装飾や形などが「見た目の綺麗さ」であり、みんな課金してね、というテキストが「伝えるべき内容」になります。

 

これがロゴデザインであれば、ロゴが綺麗かどうか、という点と、文字の意味、が分かるようにデザインする必要があります。当たり前のことなのですが、どんなにアーティスティックで綺麗なロゴを作成しても、読めなければ意味がないですよね。

 

単に見た目の綺麗さをだけを作りこむのではなく、考えてデザインしないと行けない。それが命に関わる薬剤のラベルならなおさらだ、というのが先輩デザイナーからのアドバイスでした。

 

今は私が携わっているのは、エンターテインメント業界のデザインです。間違えれば人が死ぬということはまずありません。それでもときどき、先輩デザイナーの言葉を思い出して、ちゃんとデザインに込めた意図がユーザーに伝わっているかな、と考えつつ仕事をするようにしています。

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