秦の討伐、そしてその後の楚漢戦争の最重要人物であり、のちに漢の高祖となる劉邦を主役に据えた作品です。タイトルからしてそのまんまですね。
1巻を読んで最初に驚いたのは劉邦の年齢ですね。以前に司馬遼太郎の「項羽と劉邦」を読んだときに、劉邦が項羽よりもかなり年上だったのは覚えていたのですが、この「劉邦」でも登場時ですでに48歳です。
のちに中国全土を統一する人物にしては、かなりのスロー出世といっても良さそうです。「劉邦」1巻でも、まだ劉邦は世に出ていません。帯に全4巻とあるので、四分の一を読み終えたことになるのですが、この先の展開が心配になるくらいの遅さです。
まあ、歴史が変わる訳ではないので、心配する必要もないのですが。
帯には偽りありかな。
読む前は劉邦が陳勝・呉広の乱に端を発する秦末の反乱に参加するのかな、と思っていたのですが、まだ参加もしていません。
劉邦1巻のあらすじ
秦の始皇帝は天下を統一したあと、その関心は自らの不老不死に集中していた。各地に方士を派遣し、不老不死に繋がる情報を探したが見つからない。
方士の石公も始皇帝の命令で不老不死の良薬を探していたが、見つけることができず処刑されることになっていた。
新しい天子の気が東南にあることを始皇帝が気にしていることを聞くと、石公はその気を探ることを申し出て始皇帝に許される。その気を探るために都の東南にある沛県を石公が訪れると、五彩の気を放っている男を発見した。その男こそが劉邦だった。
石公の放った刺客から劉邦が逃げていると、通りがかった寧君という一行に助けられる。寧君は政権転覆を狙うお尋ねものとして、泗水の亭長だった劉邦が探していた人物だった。
48歳でまだ世に出ていない劉邦
物語に登場する寧君とは張耳のことのようです。張耳は陳余とともにのちに陳勝・呉広の乱に参加し、将軍として活躍する人物ですね。のちに劉邦の軍勢にも参加することになるのですが、それはまだまだ先の話になるのでしょう。
劉邦はこの頃、泗水の亭長(警察署長的な役人)でしたが、まだ世に出ていません。この小説にもそのことを書いたくだりがあります。
かれ自身、四十八歳であるが、大したことを成したわけではない。むだに生きてきたと嗤(わら)われるであろう。
劉邦自身は大した能力のない、ホラ吹きの中年オヤジです。中年というか48歳なので、この時代だと初老といってもいい年齢です。そんな中年オヤジがどのように歴史に出ていく様を描かれるのか、今後の展開が非常に楽しみです^^
スポンサーリンク
劉邦の持つ特異な能力
劉邦の評価は様々です。ただ私自身が劉邦の能力で最も優れていると思うのは、劉邦が酒場に顔を出すと自然と人が集まり、その酒場が大繁盛した、という話です。
劉邦自身は裕福ではなかったので、集まった人たちに酒代をおごっていた訳ではないようです。逆に劉邦はいつもお金がなかったので、飲み代を払うことが出来なかったとさえいわれています。
それでも、劉邦が酒場に来ると、他の客が集まり酒場が儲かるので、酒場の主人は劉邦がお金を払わなくても大目に見ていたそうです。
劉邦という人物がどういう人物だったのかを、よく現しているエピソードではないでしょうか。
ゲーム風に登場人物の数値を付けてみる
劉邦は不思議な人物だと思います。コーエーさんの歴史ゲーム風に数値を付けると、
- 武力 48
- 知力 52
- 政治 68
- 魅力 100
という感じでしょうか。
とここまで書いて、実際にコーエーさんから項劉記というゲームが出ていたのを思い出しました。数値をググって調べてみると、
劉邦
- 戦闘 56
- 統率 99
- 用兵 67
となっていました。ひょっとしたら成長要素とかがゲームにあって、正確なパラメータではない可能性もあるのですが、劉邦を的確に表現していると思います。統率が戦場での統率力と考えると、ちょっと違うような気もしますが。
他に項羽と韓信も見つけたので紹介してみます。
項羽
- 戦闘 100
- 統率 84
- 用兵 80
韓信
- 戦闘 81
- 統率 93
- 用兵 96
張良や樊噲、范増、彭越、黥布、鍾離昧といった他の武将の数値も気になりますねー。
まとめ ー 劉邦の今後と項羽の登場が楽しみ
「劉邦」1巻は劉邦が陳勝・呉広の乱を知り、隠れていた山沢から世に出ることを決めたところで終わります。寧君との邂逅や呂雉との結婚、そして劉邦が赤龍の後継を示すエピソードなど、今後の展開が楽しみな1巻です。
そして何よりも、今後登場するであろう項羽がどのように描かれるのかが楽しみです^^
コメント