スマホゲームのメニューがなぜ画面の下にあるのかご存知でしょうか。
今回はパズドラを始めとするスマホゲームのメニューが、なぜ画面の下にあるのかをドラクエと比較しながら解説してみます。
2Dユーザーインターフェース(以下、2DUI)製作経験のあるデザイナーであれば、簡単な内容かもしれません。でも、2DUI製作経験のないデザイナーや一般のゲームユーザーの方であれば、ご存知ない人も多いかと思います。
ご興味がある方は、一読していただければ幸いです。
(出典 ドラゴンクエストXI)
ドラクエのメニューは左上に表示される
ドラゴンクエスト11の画像を用意しました。
注目して欲しいのはメニューの表示位置です。
家庭用のドラゴンクエストは一貫して左上にメニューがあります。
その理由は左上が強い視覚領域にあたるからです。
人間は画面を見たときに、最初に左上を視認します。そこから視線が右下もしくは右上に移動します。ドラゴンクエストのメニューはその点を考慮して左上に表示されるようになっています。
ここまでは、デザイナーであればすぐに理解できると思います。デザイナーさんでなくても、グーテンベルク・ダイヤグラムや、Fの法則、Zの法則という言葉を聞いたことがある方もおられるのではないでしょうか。
パズドラのメニューの位置は下
次にスマートフォンのゲームであるパズドラ、パズル&ドラゴンズの画面を見てみましょう。
自分でプレイしているパズドラの画面をキャプチャしてみました。
プレイされている方はフレンド申請をよろしくお願いします^^
最近は火アテナパーティがお気に入りです。
さて、パズドラのメニューはアイコンという形で下に並んでいます。パズドラだけではなく、ほとんどのスマホゲームのメニューは画面の下にあります。
人間の視線は前述したように、画面の左上を最初に見ます。ヒューマンインターフェイスの考え方に沿ってデザインするのであれば、ドラクエと同じように左上にメニューがないといけません。
それなのにパズドラを含むほとんどのスマホゲームのメニューが画面の下にあるのは、コントローラーが家庭用とは異なるからです。
スマホのゲームは指で操作する
家庭用ゲームは今でもコントローラーでプレイすることが大半です。コントローラーで操作する場合、画面を隠すものは何もありません。
スマホゲームの場合は指で画面を直接タッチして操作します。そのため、画面の左上にメニューが表示されると、指でタッチしたときに画面を手が覆ってしまい見えなくなります。
そのため、ほとんどのスマホゲームはメニューが下にあるのです。
いわれてみれば、なんだそんなことか、と思われるかもしれません。でも、ゲーム開発に関わるデザイナーであれば、レイアウトの意味まで理解している必要があります。
そしてメニューが下にあるのにはもうひとつ理由があります。それはメンタルモデルです。
メンタルモデルとは既に確立された操作方法
まずはメンタルモデルについて簡単に説明します。
- 蛇口をひねると水が出る
ほとんど人が「蛇口をひねる」という操作を行って水を出すことができるでしょう。無意識でこの操作ができるのは、経験から蛇口に対する行動が頭の中に確立されているからです。これがメンタルモデルです。
- レバー式の蛇口でレバーを下げたが水が出なかった
レバー式の蛇口で操作を誤って水が出なかった経験はないでしょうか。
蛇口をひねる方向は日本国内で統一されています。しかし上げ下げするタイプの蛇口は混在しています。そのため、ずっとレバーを上げて水が出るタイプの蛇口を操作していた方は、それがメンタルモデルとして確立していたので操作を間違えることがあります。
このように対象に対して経験から構築され、既に頭の中で確立された操作方法をメンタルモデルと呼びます。
さてスマホゲームのメニューボタンが下にある、というメンタルモデルを構築したのはどのゲームでしょうか。
問うまでもなくパズドラですね。
パズドラが登場するまではネイティブアプリでここまでヒットしたゲームはありませんでした。パズドラがその後に続くスマホゲームのメンタルモデルを作ったといっていいでしょう。
まとめ ー 2DUIの違いは指での操作とメンタルモデル
家庭用ゲームとスマホゲームの2DUIの違いは、指とコントローラーという操作の違いと、メンタルモデルの影響といっていいでしょう。
実際のスマホゲームの開発では、画面の右下をボタンが押しやすい領域と判断して、操作するボタンを右下に固めたりしています。逆に前の画面に戻るボタンは、操作しづらい左上に配置したりとかですね。
ここまで来ると2DUIの実践的なことになるので、それについてはあらためて記事にしてみたいと思います。
最後に少し雑談を。
最初に、ドラクエは家庭用ゲーム、と書きましたが、この家庭用ゲームという呼び方はあまり気にしないでください。業界でも呼び方は様々です。
- 家庭用ゲーム
- コンシューマーゲーム
- コンソールゲーム
のどれかで呼ばれることがほとんどです。
ファミコンから今に至るまでもうかなりの年数が経ちましたが、未だに統一されていないのもおもしろいなあと思いつつ、今回はこの辺で。
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