東野圭吾の加賀恭一郎シリーズの刑事の7番目の事件です。
ドラマ化された新参者が8番目の事件なので、その一つ前の作品ということになりますね。
東野圭吾氏といえば白夜行や秘密、そして容疑者Xの献身が何といっても有名ですが、この加賀恭一郎シリーズも10年に渡って書き続けられているシリーズです。
犯人が分かっている倒叙ミステリー?
ミステリーの中でも倒叙ミステリーと呼ばれるジャンルがあります。
犯人が既に分かっている、もしくは最初に犯罪を犯すシーンが描かれるタイプの作品が倒叙ミステリーです。
ドラマでいうと「古畑任三郎」シリーズが有名です。最初に犯行シーンがあり、その後に主人公である古畑任三郎が登場して、犯人のアルバイを崩したり、犯人の組み立てたストーリーの矛盾を指摘したりするのがドラマの主題になります。
「赤い指」も倒叙ミステリーというジャンルに含まれる・・・と思います。
少し歯切れの悪い表現なのは、この作品は犯人が重要ではないからです。倒叙ミステリーの主題になることが多いアリバイ崩しもほとんどありません。
ジャンルとしては倒叙ミステリーに含まれるが、それが主題ではなく、家族の葛藤を描いた作品といっていいでしょう。
赤い指のもう一つのドラマ
小学生の女の子の死体が公園のトイレで発見されます。
その死体を「置いた」のは主人公である前原昭夫です。前原昭夫は妻である八重子と一人息子である直巳、そして老いた母親の政恵と一緒に暮らしています。
加賀恭一郎が前原家族の犯した犯罪に迫るのが、本作の主題ですが、もう一つのドラマがあります。それは加賀恭一郎の実の親である加賀隆正とのエピソードです。
加賀隆正はガンをわずらい、余命いくばくもありません。加賀隆正が入院している病院に、甥である松宮脩平が訪れているシーンが冒頭に描かれています。松宮脩平は加賀隆正の甥なので、加賀恭一郎からみればいとこになりますね。
松宮脩平は加賀恭一郎と組んで事件の捜査にあたるのですが、事件解決後に加賀隆正と恭一郎とのもう一つのエピソードが明らかになります。
まとめ ー 二つのエピソードの読後感
東野圭吾の作品は物語の最後にどんでん返しがあります。この作品でもそれがあるのですが、読後感はあまり良くありません。
もう一つのエピソードである加賀隆正と恭一郎のエピソードはいいなあ、と思いました。加賀恭一郎の父親にふさわしいシーンでした。
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