和田竜氏の歴史小説の白眉は「のぼうの城」だと思いますが、このシリーズもおもしろいですね。戦国時代に瀬戸内海に君臨した村上武吉の娘「景」を主人公にした「村上海賊の娘」です。
今回読了したのは第二巻です。書評であればシリーズ全てを読んでから書くべきかもなのかもしれませんが、そこは個人が書いている雑記ブログということで、ご容赦いただければと思います。
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戦国時代に瀬戸内海に君臨した村上武吉の娘
村上武吉は戦国時代に瀬戸内海の能島を中心に活動した、村上水軍の大将です。村上武吉は因島や来島の海賊の棟梁だったともいわれ、瀬戸内海において大きな権力を持っていたといわれています。
「村上海賊の娘」の主人公の景は、村上水軍の棟梁である武吉の娘になります。景は目鼻立ちがくっきりとしていて、現代であれば美人なのですが、戦国時代では醜女の範疇に入るという設定です。ただ大阪の泉州では、南蛮の文化が根付いているのか、美人の概念が異なっており、景が逆に美人としてもてはやされます。
そんな美貌を持つ景は、侍に劣らない武芸をもつ女丈夫でもあります。そして二巻はその景が泉州を舞台に大活躍する物語・・・ではありませんでした。
織田信長VS本願寺顕如が戦った石山合戦
織田信長は仏敵という異名を取ったことは有名ですが、その戦いの一つが、大坂石山を本拠地とした本願寺顕如との戦いです。その戦いは実に10年近くにも渡り、信長の最大の戦いは長篠でも桶狭間でもなく、この石山ではないかともいわれています。
「村上海賊の娘」の二巻の中心になっているのは、その石山合戦の中でも、最大の激戦と言われた天王寺の戦いです。
当時、中国の毛利氏は織田信長と敵対していたので、織田と敵対していた本願寺に味方していました。村上武吉は独立していた時期もあったようですが、この頃は毛利氏に従属していたので、その娘である景も本願寺側として・・・ではなく、なぜか織田側である天王寺砦に入り込みます。
これにはそれまでの話の流れがあるので、全然不思議ではないのですが、不思議なのは景の行動です。ちょっと突飛な行動をする主人公なので、予測がつかないおもしろさがあります。別の言い方をすれば、予測ができないので、感情移入しにくい主人公であるともいえます。
織田信長の配下の不運な武将、原田直政
物語の中で本願寺攻めの総大将として原田直政が登場します。
織田軍といえば柴田勝家、丹羽長秀、滝川一益、明智光秀、羽柴秀吉という5人の司令官が有名ですが、これは織田軍の後期の編成で、この頃とは大きく違っていました。
筆頭家老はおそらく林通勝であり、佐久間信盛や荒木村重、そして原田直政も一軍を率いていたのでしょう。
明智光秀が惟任、丹羽長秀が惟住、という九州の古い姓を与えられたように、原田直政も本名は塙直政であり、原田というのは信長から与えられた九州の古い姓です。信長は来るべき九州征伐に備えて、部下に姓を変えるように指示したので、その点を考えると原田直政は信長に期待された侍大将の1人であったということになります。
信長が出て来る歴史小説は数多くありますが、石山合戦を舞台にしたものは少なく、原田直政が出て来るのも珍しいと言えます。
まとめ ー 知られていない戦いのおもしろさ
戦国時代の戦いの多くは小説家されていますが、石山合戦の天王寺の戦いが小説になったのはおそらく初めてではないでしょうか。真鍋七五三兵衛のようなマイナー武将が出てくるのも珍しいですね。
真鍋七五三兵衛もそうですが、歴史小説や歴史を扱ったマンガに登場しないマイナー武将はたくさん存在します。織田軍だけでも蜂屋頼隆や河尻秀隆、金森長近、坂井政尚などは取り上げられることの少ないマイナー武将と言えるのではないでしょうか。
だれか蜂屋頼隆を主人公にした小説を書いてくれないかなあ・・・
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