戦の国 冲方丁氏による戦国武将を主題にした連作だが・・・

書評・読書

冲方丁氏というと「マルドゥック・スクランブル」が真っ先に思い浮かぶのですが、最近だと映画化された「天地明察」の方が有名かもしれません。

 

戦の国」は「天地明察」と同じ歴史小説で、戦国武将を主人公にした連作をまとめた本といっていいでしょう。

 

気をつけないといけないのは、本としてまとめられて一冊にはなっていますが、元々は別々の小説なので、まとめられたとしても繋がりはないという点ですね。

 

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(出典 Amazon)

ちなみに冲方丁の読みは「うぶかた とう」です。この記事を書くまで「うぶかた てい」と読んでいました(^^;

 

マルドゥック・スクランブルを読んだときは「うぶかた てい」だったような気がするのですが、それはおそらく私の記憶違いでしょう。

 

6人の戦国武将が主人公

6部構成になっていて、それぞれに主人公が異なります。

  • 織田信長 桶狭間の戦い
  • 上杉謙信 川中島の戦い
  • 明智光秀 本能寺の変
  • 大谷吉継 関ヶ原の戦い
  • 小早川秀秋 関ヶ原の戦い
  • 豊臣秀頼 大坂の陣

主人公と題材になっている戦いをピックアップしてみました。この書籍は個別に書かれた短編を一冊にまとめたものです。いわば短編集ですね。「戦の国」としてストーリーがあるわけではありません。

 

実は私自身はそれを知らず、戦国武将の連作でなにか伏線があるのだろうか、と考えつつ読んでいました。最後まで読み終えて、何もなかったのでちょっと肩すかしをくらった気分です。

 

いや、元々は別々に発表された作品をまとめた本なので、なくて当たり前なのですが。 

 

小早川秀秋 名将なのかどうか

歴史小説でもほとんど取り上げられない武将の一人が小早川秀秋です。豊臣秀吉の義理の甥であり、のちに養子となり、一時期は跡継ぎの可能性もあった人物です。

 

秀吉に実子が誕生したことで、毛利両川のひとつである小早川家に養子に出されます。関ヶ原の戦いの戦いには、西軍の一角として松尾山に1万5千もの大軍を率いて参戦します。

 

そして徳川家康の鉄砲での脅しに動転して西軍を裏切り、西軍崩壊の引き金になった人物です。

 

ほとんどの歴史小説では、小早川秀秋は暗君として扱われています。

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(出典 Wikipedia)

Wikipediaの肖像画もどことなく、暗君っぽい感じです。21歳で急死したので、長生きしていれば評価は変わったかもしれませんが。

 

「戦の国」の小早川秀秋は、ちょっと変わった人物像として描かれています。名君ではないものの暗君でもありません。そしてその最期も裏で糸を引いていた人物が居たことを示唆するような最期でした。

 

豊臣秀頼 評価が分からない秀吉の後継者

豊臣秀吉の一族は本人である豊臣秀吉とその弟である豊臣秀長以外は、全て凡人かそれ以下の能力しか持たない人物ばかりでした。

 

その中で評価が定まらない人物が一人います。

豊臣秀吉の後継者である豊臣秀頼です。

 

秀頼は関ヶ原の戦いのときは7歳、大坂の陣のときでも21歳だったので、評価が定まらないのも仕方のないことなのかもしれません。もう少し長生きしていたら、評価は変わった・・・というよりは、家康が先に死んでいたでしょうから、歴史が変わったかもしれません。

 

「戦の国」に登場する豊臣秀頼は、聡明な武将として描かれています。実際の秀頼も聡明だったのかもしれません。ただあまりにも環境が悪すぎました。もし秀頼が大坂城の奥深くではなく、しっかりした武将に養育されていたら、ちがう運命を歩むことになった可能性はあります。

 

当時の大坂城に居た武将で有名どころというと、

織田常真(信雄)

織田有楽(長益)

片桐且元

くらいでしょうか。

 

織田信雄はうつけで有名ですし、織田有楽は本能寺の変で信忠を見捨てて逃げた人物です。賤ヶ岳の七本槍の一人である片桐且元は気骨のある武将といってもいいでしょうが、ちょっと小身者すぎて養育係とまでは行かないでしょうね。

 

まとめ ー 秀秋や秀頼の各話はおもしろいが

以前に自分の好きな歴史小説でランキングを作成したことがあります。

 

 

もしこの本が面白かったら、ランキングを修正しないとなー、と考えていたのですが、残念ながら変動はありませんでした。

 

おもしろくなくはないのですが、一冊にまとめるのであれば、各話で独立しているのではなく、伏線があって最後の豊臣秀頼のところでそれが分かるような仕掛けがあればよかったのですが。ちょっと期待しすぎたのかもしれません。

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