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祈りの幕が下りる時 文庫版の評価【ネタバレあり】

「祈りの幕が下りる時」の書評は先日記事にしたのですが、ネタバレが気になったので、どうしても物語の内容には深く突っ込むことができませんでした。

 

 

今回はネタバレありで文庫版の評価を記載します。まだ未読の方でネタバレが気になる方はご注意ください。

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祈りの幕が下りる時のあらすじ

主人公である加賀恭一郎の母親である田島百合子は、36歳のときにうつ病を発して自宅を出て仙台で働き始めた。憂いのある美人だった百合子は、職場であるスナックでの評判も上々だったが、次第に体調を崩し十数年後に心不全で失くなってしまう。

 

スナックのオーナーである宮本康代は、田島百合子と深い仲だった綿部俊一に連絡をとり、百合子の一人息子である加賀恭一郎に百合子の死を伝える。

 

一方、東京の小菅のアパートでは押谷道子の遺体が発見された。アパートの持ち主は越川睦夫という男性だったが、越川は既に行方を絶っていた。

 

押谷道子は滋賀在住で、中学生の頃の同級生である浅居博美に会いに上京していた。浅居は押谷に会ったことは認めたものの、殺害にはまったく関与していないという。

押谷の遺体が発見されたアパートには、カレンダーに不思議な書き込みがあった。そして同じ書き込みが田島百合子の部屋からも発見される。

 

警視庁捜査一課の松宮脩平は、近くで発生したホームレス焼死事件との関連性が気になりながらも、越川睦夫の行方を追ううちに、浅居博美の中学生時代の恩師である苗村誠三が失踪していることを突き止める。

 

浅居博美は中学生の頃に母親は家出しており、父親は自殺していた。浅居は上京後に女優、そして演出家として成功するが、大きな過去を引きずっていた。

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祈りの幕が下りる時の最大のトリック【ネタバレあり】

あらすじは物語の中盤くらいまで書いてみましたが、ここから大きなネタバレがあります。

まだ映画や文庫を未読の方はご注意ください。

 

この物語は4人の人物が殺されています。

  1. 横山一俊
  2. 苗村誠三
  3. 押谷道子
  4. 浅居忠雄

時系列順に並べてみると上のようになります。

あらすじに登場しない横山一俊という人物は原発の作業員で、浅居親子と深く関係しています。早い話が浅居忠雄は自殺しておらず、身代わりにされたのが横山一俊という人物です。

 

そして誰が誰を殺したのかを整理すると下記のようになります。

  • 横山一俊の殺害者 浅居博美
  • 苗村誠三の殺害者 浅居忠雄
  • 押谷道子の殺害者 浅居忠雄
  • 浅居忠雄の殺害者 浅居博美

中学生の頃の浅居博美が横山一俊を殺害してしまったのは、行き過ぎた正当防衛といえるでしょう。横山は中学生だった博美をレイプしようとして、抵抗した博美が箸で口の中を突いたことにより死亡しました。博美は無罪にはならなくても、未成年でもあり確実に執行猶予になる事件でしょう。

 

ただ、横山一俊の死を浅居忠雄の自殺に見せかけたのが、浅居親子の儚くも悲しい人生のスタートになってしまったのは間違いありません。

借金取りに追われ、自殺を覚悟していた忠雄にとってはそれしか選択肢がなかったのかもしれませんが・・・

 

横山一俊から綿部俊一という偽りの名前に変わったあとも、実の娘である浅居博美を見守り続ける浅居忠雄は、その正体に気づいてしまった苗村と押谷を殺害してしまいます。

 

自責の念から自殺しようとする浅居忠雄を、私が殺してあげる、という博美と、ありがとう、という忠雄があまりにも切ない・・・そんな物語でした。

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解決していない謎

解決していない謎、というか疑問点が2つあります。

浅居忠雄はいつ綿部俊一、そして越川睦夫になったのか?

ひょっとしたら私が読み落としたのかもしれませんが、浅居忠雄がいつ綿部俊一、そして越川睦夫になったのかが分かりません。

浅居忠雄は3つの偽名を使っていました。

  • 横山一俊
  • 綿部俊一
  • 越川睦夫

横山一俊は娘である博美が誤って殺してしまったので、身代わりとしてその名前で原発で働いていました。放管手帳が再発行されたという記述があるので、浅居忠雄は写真を取り直して横山一俊として働いていたことは間違いありません。

 

放管手帳を横山一俊として作成し直したのなら、原発で働き続ける以上、ずっと横山一俊として押し通さないといけないはずです。どこで綿部俊一、そして越川睦夫になったのだろう・・・?

 

なぜ田島百合子がメモを持っていたのか?

メモの内容は浅居親子が落ち合うための場所を記したものです。浅居忠雄は自分が生きていることを隠すために、その秘密を知った苗村や押谷を殺害しました。それくらい正体を誰にも知られる訳にはいかなかったのです。

 

田島百合子とは「傷を舐め合うような関係だった」との記述がありますが、殺人を犯してまで守らなければならない秘密を、いくら親しかったとはいえ、交際相手に知らせるでしょうか。

 

まとめ ー 読後感がいいのは田島百合子のエピソードがあるから

ミステリーで読後感がいい作品というのはめずらしいのですが、祈りの幕が下りる時は読後感がいい作品です。

 

それは最後に田島百合子のエピソードがあるからでしょう。

 

家族から離れて仙台という地で一人で亡くなった田島百合子が、ずっと一人息子である加賀恭一郎のことを想っていたというエピソードが、この作品の印象を良くしていることは間違いありません。

 

映画版もみてみるかな(^^)