昔、田舎に住んでいた。
夜になるとカエルの合唱が五月蝿いくらいに鳴り響いた。
街灯はなく、夜になると空気に墨汁を溶かしたような闇だった。
そんな田舎の夕暮れだったと思う。
一人の老婆が歩いていた。
夕焼けの中を、鍬を担ぎ、籠を背負い、タバコを吹かしながら歩いていた。
私はタバコを吸わない。どちらかと言えば嫌いと言っていい。臭いがどうしても好きになれない。
でも、その老婆を凄くかっこいいと思った。
タバコをくゆらせながら、ゆっくりと歩く老婆を。
今日も仕事したなあ、という充実感がその体からは滲み出ていた。
紫煙は老婆の周りをゆっくりと棚引き、
老婆の顔は夕日を浴びて黄金色に輝いていた。
いつもと違う文体で、私が過去に目にしたかっこいい情景を書いてみました。
読み返してみると凄く照れくさいのですが、まあ、たまにはこういうのも良いかと思います。
一日の仕事を終えて、ゆっくりとタバコを吹かすおばあちゃんのように、充実した日々が送れることを願って。